ヘルニアがあって、足のしびれや痛みが大きいとき、これは即座に「ヘルニアによる座骨神経痛」という診断を受けるようです。
これは診断というよりは、むしろ「定説」というべきかもしれませんネ。
実際に変動の起こる順序や流れを把握し、その上で判断しているわけではなく、「しびれがあればヘルニア」という枕詞のようなものじゃあないのかナ?と勘ぐってしまうのです。
しかし、ホントにそうでしょうか?
さまざまなおからだを診ていますと、必ずしもそうではない、否、むしろそうではないことの方が多いのではないか。
足(脚)全般をみてみましょう。
股関節とヒザ、足首の3つの関節は、常に相互に関連しあい、有機的に連動しあってはじめて、スムーズに歩いたり走ったりできます。
しかし、なんらかの原因によってそれらがちぐはぐになってしまい、どこかで連動が滞ってしまったとき、不具合が出てきます。
たとえば足首を内側にひねってネンザしたとしましょう。
ヒザから下、足首までは骨が2本出ていますが(腓骨と脛骨=ひこつとけいこつ)、それはくるぶしとなって足首に接合しています。
それが一方は下へ、もう片一方は上へとズレてしまいます。
それがズレたままヒザへ行き、ヒザはその不具合を受けたまま、大腿骨(だいたいこつ=ヒザから上の骨)を経由して股関節に不整合な状態を伝えます。
そうしますと股関節は硬くなり、股関節が硬くなりますと、背中の筋肉までも硬くなります。
そしてなにより、股関節は骨盤の下にありますから、骨盤も歪めてしまい、仙腸関節(せんちょうかんせつ)がズレ、こわばらせます。
それが腰椎(ようつい)に及びますと、そこで「ヘルニア」という問題が起こってくるわけです。
ただし、ヘルニアそのものがこじれてひどくなりますと、ヘルニアもまた座骨神経痛を発する原因となって、多重的複雑系の症状になますから、こうなってきますと少々、やっかいなことになります。
つまり、ヘルニアは単なる結果であり、一番最後に起こったことであって、それ以前にそうなる経緯というものが存在したということなのではないかというふうに思っているのです。
それは足首であり、膝であり、はたまた腕であり、そして、それぞれの相関関係のなかにヒントがあることがとても多い。 そのヒントというものは形にはあらわれていないものですけど、根本から治療をするためには、その目には見えない影の部分までを追求し、その本質を解読して、できるだけ大本にアプローチすることが必要になるわけです。
この「解読」というものができていないから、腰なら腰だけ、痛いとこなら痛いとこだけどうにかしようとして、結果、どうともならないのではないでしょうか。
「腰もそうだけど、なにより足が痛い!」ということでお見えになったKさん。
なんでもヘルニアによる座骨神経痛と診断され、痛み止めを処方されても効かない、どこの治療院に行っても改善しないとのことでした。
まず、一番力がほどけて、ラクになれる体勢、この方の場合は、一番痛くない体勢になってもらいます。
なるほど、痛いと言ってる箇所が張っています。
ホントは、末端(足先)から調整していくのが望ましいのですけど、この方のように辛い状態が大きい場合、その場所から操法します。
この張っている箇所が痛いのは、張っているからではなく、関節同士の不整合のしわ寄せが集まっていて、そこの筋肉が拘縮して神経を圧しているから痛いわけです。
ですから、いくら揉んだって意味はありません。
上下の関節に手を当て、ホンのちょっと流れをつけるようにしてあげると、自働的に関節の角度が変わってきますので、その変化が経過するまで手を当ててあげます。
で、場所を見極め、各関節を調整するまでものの5分。
「どうですか?」と聞きますと、Kさんは「痛みは軽くなりました」とのこと。
しきりに不思議がっておられますが、ホントはまったく不思議でもなんでもないンです。
Kさんの場合は症状は強かった割にはさほどこじれていない状態だったのでスラスラいきましたが、上記の複雑系のこじれた状況までいっているようでしたら、それなりに時間と回数をかけることも必要にはなってきます。
とにかく単純系か複雑系か、どれだけこじれているかということがポイントとなりましょう。
症状が強くてもスッとよくなることもあれば、症状はさほどではなくても変化しにくいこともあります。
ですから症状をうかがっただけではどれくらいでよくなるか、判断は難しい。
やはりKさんの場合は、ちょっと特殊と言えましょう。
この場合においても、激痛の症状を緩和するという意味ではものの5分で事足りましたけど、もちろんそこからあらためて全身、きちんとバランスをとって調整はしなければなりません。
でも、それほど頻繁にお越しにならなくても大丈夫でしょう。
何度も肩の脱臼を繰り返していたこともあり、そのあたりの調整もおこない、腰や足と同時に一気に肩も軽くなってKさんには喜んでいただきました。
あまけにお礼にと実家の方の名産品もいただきましたが、よくなっていただければ私は何も言うことはなく、ただただ恐縮した次第です。
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