年末、電話がありまして、「突然の腰痛に襲われて、どうにも動けないんです」というお話がありました。
「愉和へうかがいたいのだけれど、歩くことはおろか、立つこともできない」ということで、「いまはどうすればよいでしょうか?」とのご質問でした。
私は「ああ、いわゆるギックリ腰だナ」と思いましたので、「おそらく炎症を起こしているのだろうから、まずは冷やしてみてください」とお答えしました。
それからも日に1回くらいお電話をいただいてアドバイスをしていたのですが、2、3日経ってもまだ起きられないと言います。
通常のギックリ腰でしたら、安静にしてさえすれば数日で炎症がおさまって動けるようになるのですけど、動けない状況は変わっていないとのこと。
しかも彼女(Yさんとしておきます)は、とても落ち着いた声でお話をされますので、まったくせっぱ詰まった様子が伝わってこないのです。
私もそれにダマされて(?)、あまり深刻にはとらえておりませんでした。
私は通常、往診はしないのですけど、Yさんは以前に見えられたこともありますし、足かけ2年伏せっているのもお気の毒。
ちょうど30日で仕事納めをしましたので、大晦日にうかがうことにしました。
ちょいと蛇足になりますが、私は操法中心の生活をしていますので、あまり出かけることも電車に乗ることもありません。
一日中一歩も外へ出ないことだってあります。
そんなわけで、久々の電車での外出はとても新鮮でした。
そうこうして家にうかがい、お話をうかがってみますと、微動だにできないといってよいような腰痛だったそうです。
その方が動けないため、お母さまが中部地方から急きょ新幹線でお越しになり、身の回りのことをされていたとの由。
動けないということは聞いていましたが、これだけのものとは、あの落ち着いた態度と言葉遣いからは想像できませんでした。
これは私が迂闊でした。
さっそくおからだを拝見しますと、どうにも症状が激しくて、からだの状況を解読しにくい状態になっています。
足首やヒザを調整しても痛みは変わりませんし、骨盤を調整しても、大きな変化はありません。
お腹を調整していくうちに気持ちよい感覚が出て来、ようやく痛みも変わってきました。
こうして文章にして書いてみますととても単純な感じがしますが、実際には牛歩の歩みでしか進めず、とても時間をかけての操法だったことを告白いたします。
正直、1時間ではなんにも変わっていなかったでしょう。
ひとつひとつ、こじれて凝り固まったものをほどいていって、ようやくそのときできる限りのことをすべてやり終えました。
時間にしますと3時間以上。
要点をまとめてみますと、痛みの場所は右の腰の下方と上方のほぼ2カ所。
ちょっとでも力を入れようとすると、そこにズン!と痛みが響くような塩梅でした。
いちばんのモンダイは腸骨(ちょうこつ)の内側がひどくこわばっており、そこがあちこちを引っ張って骨盤を歪ませ、もっともしわ寄せの行く腰後方に大きな痛みを発生させているといった状態でした。
骨盤を整えるという調整法ではなく、固まったこわばりをほどいていくことによってテンションが解除され、自然と骨盤が整う流れを誘導していくことが適っていたわけです。
で、終わってみますとまだ痛みは残っているものの、歩いて動くことができるようになりました。
立つことも這うこともできませんでしたからYさんもお母さまもたいへん驚き、また喜んでくれましたが、私は正直なところ内心、そうとうに必死でした。
その後も操法を重ねましたが、月に2回ほど彼女の受け持っている講習を休むこともせずに済み、このこともたいへん喜んでくれました。
私がもともと往診をしないことを知っていてなお、しかも年末だというのに救急車も呼ばずじっと伏せっていて、ただ私の指示だけを守って痛みに耐えていたYさんには、本当に頭が下がりました。
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